ご自宅のドアが「バタン!」と勢いよく閉まってしまい、驚いたり、ヒヤリとしたりした経験はありませんか?
その現象は、ドアの上部についている「ドアクローザー」という装置の調整で直る可能性が高いです。
この記事では、ご自身での調整に挑戦したい方のために、その基本的な方法と、実行する前に必ず知っておいてほしい重大なリスクについて、プロの視点から詳しく解説します。
結論から申し上げますと、ご自身での調整は可能ですが、失敗すると高額な修理費用が発生するリスクが伴います。
自分で調整する前に知るべきこと

ドアクローザーの調整は、一見すると「ネジを回すだけ」の簡単な作業に見えます。
しかし、その実態は非常にデリケートな作業です。万が一失敗すると、調整どころか部品一式の交換が必要になり、数千円で済むはずだった修理が、数万円の出費に跳ね上がるケースが後を絶ちません。
まずは、どのような危険があるのかを理解することが、最も重要です。
なぜ「自分で調整」に注意が必要なのか?
ご自身で作業した結果、状況を悪化させてしまう代表的な失敗例をご紹介します。
これらは本当によくある話です。
1. 油漏れを引き起こす
ドアクローザーは、内部の油の圧力でドアの閉まる速度を制御しています。
- 調整ネジを緩めすぎる
- 触ってはいけない「本体のフタ」のネジを回してしまう
これらを行うと、内部の油が漏れ出してしまいます。
一度油が漏れると、そのドアクローザーは速度調整の機能を完全に失い、修理は不可能です。本体一式を交換するしかなくなります。
2. ネジ山を潰してしまう(なめる)
調整ネジはプラスドライバーで回すタイプが多いですが、長年使われているものは非常に固く締まっています。
「なんとか回そう」と無理に力をかけると、ネジ山が潰れてしまいます(これを「なめる」と言います)。ネジ山が潰れると、もうドライバーがかからなくなり、調整が二度とできなくなります。
3. 安全面での危険
ドアクローザーはドアの上部にあります。作業には安定した脚立が必須です。
不安定な椅子などを使って作業し、転倒して怪我をする危険もあります。
「バタン!」を放置するリスク
調整が怖いからと、「バタン!」と閉まる状態を放置することにも、大きな問題があります。
- ドア本体へのダメージ
毎日の強い衝撃で、ドアの「立て付け」が悪くなり、徐々にドアが傾いてきます。 - ドアノブや部品の破損
ドアノブ横の部品(ラッチボルト)や、ドア枠側の受け金具(小板)が、強い衝撃で変形・破損しやすくなります。 - 重大な怪我のリスク
年配の方やお子さんが、気付かずに手や足を挟んでしまう危険があります。 - 最悪はドア交換(50万円以上)
ダメージが蓄積しドア枠ごと歪んでしまうと、修理不能となり、ドア一式の交換(安くても50万円以上)が必要になることもあります。
リスク承知で試す「簡単な調整方法」

ここまでのリスクをすべて理解した上で、「それでも自分で試してみたい」という方のために、基本的な調整手順を解説します。
※あくまで自己責任で、慎重に行ってください。
準備するもの
- プラスドライバー(ネジ山に合ったサイズ)
- 安定した脚立
STEP 1:調整ネジの場所を確認する
ドアクローザーの本体(箱型の部分)の側面を見てください。そこに、調整用のネジがあります。
- 多くの場合、ネジは2つ(または3つ)あります。
- それぞれがドアの閉まる「区間」の速度を調整します。
- 第1速度区間:ドアが大きく開いた状態から、閉まる直前(残り10~15度くらい)までの速度。
- 第2速度区間:閉まる直前から、完全に閉まるまでの速度。
- 「バタン!」と閉まるのは、主に「第2速度区間」が速すぎることが原因です。
STEP 2:ネジを「ほんの少し」だけ回す
調整の基本ルールは「時計回り(右)に回す=遅くなる」「反時計回り(左)に回す=速くなる」です。
<調整のコツ>
- 「バタン!」の原因である「第2速度区間」のネジを特定します。(製品に「1」「2」と書いてあることもあります)
- まず、時計回り(遅くする方向)に、ほんの少し(10~15度程度)だけ回します。
- 一度脚立から降りて、ドアを開け閉めし、速度を確認します。
- まだ速いようなら、再度STEP 2を繰り返します。
【最重要】調整時の注意点
- 絶対に緩めすぎない(回しすぎない)
反時計回りに回しすぎると、ネジが外れて油が噴き出したり、速度が急に速くなりすぎたりします。- 固い時は無理をしない
ネジが固くて回らない場合、それはサビや固着が原因です。無理に回すとネジ山が潰れます。その時点ですぐに作業を中止してください。- 本体のフタのネジは絶対に触らない
側面ではなく、本体のフタを固定しているネジは、絶対に緩めてはいけません。油漏れの原因になります。
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