赤坂のサウナタイガー火災事故で亡くなられた方々のご冥福を、改めて心よりお祈りいたします。
今回の続報で明らかになったのは、事故が起きた部屋のドアノブが少なくとも二度交換されていたこと、さらに別の部屋でも内側のドアノブが外れ、利用者が一時的に閉じ込められていたという事実です。
しかも業者からは「押すタイプのドア(パニックドア)に変更した方が安全だ」と提案があったにもかかわらず、「密閉性が保てない」という理由で見送られていたといいます。
つまり今回の事故は、突然の出来事ではなく、予兆が積み重なった末に起きた可能性が高いということです。
そしてその予兆は、決してサウナだけの話ではありません。

すでに家庭でも起きている“閉じ込め”

現場で日々受ける相談の中には
「昨日リビングから出られなくなった」
「子どもがトイレに閉じ込められた」
「自分でドアを壊して何とか出た」
というケースが少なくありません。
ニュースにはなりませんが、室内での閉じ込めは日常的に発生しています。
今回のサウナ事故との違いがあるとすれば、たまたま近くに助けてくれる人がいたかどうか、それだけです。
本当に壊れているのは“鍵”ではない

室内ドアのトラブルというと、多くの方は「鍵が壊れた」と思います。
しかし実際には、原因の多くがラッチボルトの破損です。
ドア側面にあるドアノブを下ろすと出入りする金属部品がラッチボルトですが、長年の使用で内部にヒビが入り、バネが折れ、粉状になっていることがあります。
外からは分かりません。ノブを外して初めて、内部が崩れていることに気づくのです。
使用頻度が高い場所ほど危険

特に劣化が激しいのは、トイレとリビングのドアです。
トイレは施錠回数が多く湿気もあり、リビングは扉が重く、風で勢いよく閉まる衝撃を繰り返し受けています。
その衝撃が内部に蓄積し、ある日突然、動かなくなることがあります。
「さっきまで普通に使えていた」という状況で、急に開かなくなる。
これが閉じ込めの怖さです。
高齢者世帯で起きたらどうなるか

若い人であれば、ドアを蹴破ることができるかもしれません。
しかし高齢者は違います。真夏のトイレや脱衣所で閉じ込められれば、短時間で体力が奪われます。
真冬であれば低体温の危険もあります。
声が届かない環境、工具もない状況での閉じ込めは、想像以上に深刻です。
「まだ動く」は安全ではない

国内メーカーのラッチボルトは、多くがダイカストやアルミ素材で作られており、二十年以上使われたものでは内部破損が急増します。だからこそ日本ロック工業会は、一般錠前を十年で交換することを推奨しています。
「まだ動くから大丈夫」という考えは危険です。
動くことと、安全に動き続けることは別問題です。
少しガタつく、戻りが鈍い、異音がする。そうした違和感は、最初の警告です。
サウナ事故と家庭は同じ延長線上にある

赤坂のサウナ事故は、高温多湿という特殊な環境で起きました。
しかし本質は同じです。劣化を放置し、予兆を軽視し、「まだ大丈夫」と考えたことが重なった結果、閉じ込めが起きたのです。
ドアノブは単なる取っ手ではありません。
ラッチボルトはただの部品でもありません。人を守るための機構です。
ニュースになっていないだけで、小さな閉じ込めは今日もどこかで起きています。
今回の事故を特別な出来事で終わらせず、自宅のドアノブとラッチボルトを見直すこと。
それが次の事故を防ぐ一歩になります。
壊れてからではなく、時間で交換する。その意識が、事故を止める最も確実な方法です。
